記憶を引き継ぎますか?引き継ぎませんか?

.....

俺は死んだらしい。

あたり一面は真っ白な空間で包まれていて果てしなくひろい。

俺は久しぶりに地平線というものを見た。

俺は知らず知らずのうちに一列で並んでいるみたいだ。

....多分だが、ここで俺は地獄の閻魔様と話すことができるのかもしれないな。

 

 

 

あなたの記憶を引き継ぎますか?

は?

いきなりだ。こんなわけわからない質問を顔見えない大男に言われた。

.....というかこいつはなんなんだ?神か?閻魔様か?というか何をいってるんだこいつは?

なぜ?そのようなことを聞かれるのですか?

.....いえ、ここ最近、私たちあの世事務局では、転生するお客様に対して新しいサービスを作られたんですよ。まあ、こちら側の勝手な都合です。お気になさらず....

はぁ...

......

でも、これは計り知れないチャンスだ。俺は前世ではあんまりよくない人生だったからこれをいかしてやりたい。

ぜひ!おねがいします。

では、あなたの望みを叶えます。いってらっしゃいませ。

 

.........

うまれた。俺はうまれた。

今回の人生は自分がやりたいこと、前世ではできないかったことをするとしよう。

それは、恋だな.....前世では俺は勉強に明け暮れて科学者という道を選んだがなんてことはない。あまり幸せな道とは言えない人生だった。金はあるしもちろん周りよりは優秀で慕われた人生だったが、それでもただ一人を愛することは俺にはできなかった。

俺は、人を愛し、信じあえるような人といれることに私は強烈に憧れた。だから私は今世では恋をたくさんしよう。

 

そして私はたくさん行動するようにした。小学校の時ですらできるだけ女の子と話すようにした。もちろんその成果あって私は中学校、高校生大学生の時には女性には困らないようになっていた。

そして25歳になると私にも妻子を持つようになった。

ただ、私の中で妙な違和感を感じるようになっていった.......

「パパ―ここ教えてよ!」

「おーどれどれ、あーこの連立方程式が解けないのか。おいおい、ここはかなり簡単な問題だぞ。しっかりと勉強しなさい。」

「はいー」

まあ、ここまで見るといたって普通の家族の会話かもしれないが僕にとってはこの程度の問題は朝飯前なのでなぜ躓くのかもよくわからず少しだけイラついた。

 

...........

この時もだ。

部下「〇×さんここの資料のまとめ方おしえてくださいよー」

〇×「おいおい、こんなの中学生の時にはすでに習っていた項目だぞ?こんなこともわからないのか?」

部下「いやーありがとうございます。」

 

..........

ムカついた......いやこんな会話もしかしたら当たり前なのかもしれないけれど、僕にとっての常識だとそんなことを聞く常識なんてない......

というか全員が馬鹿ものばかりだ。

息子にしてもそうだ、妻にしてもそうだ、部下にしてもそうだ、上司にしてもそうだ。

なにかがおかしいというより、科学者時代の僕と違って知識がないがゆえに話が合わないのだ!それが僕にとって何よりも耐え難かった。

......やはり科学者を目指すべきだった.......

 

............だめだな....

僕は死んだ.......

あーまたこの世界か......変わらず真っ白.....またこの列に並ぶのか......

多分だが、体感時間2時間くらい待たされたと思う。はぁーさっさと転生させてくれ

 

あなたの記憶引き継ぎますか?

えぇお願いします。

 

そしてまた俺は生まれたのだ、やはり俺には科学者が似合っているのだろう。自分が今までやっていた職業を目指したほうが時間も忘れることができるし、何よりとても幸せなことだと思う。よし!今世は科学者だ!

 

そして、俺はいつものように小中高勉強に入り浸る生活が始まった。もちろん記憶を引き継いでいるわけだし誰よりも番強の理解度だって早いはずだ。

さて、今回もいつも通り楽勝な大学の試験を受けて最良な人生を送ろう....

 

 

 

 ........おかしい。これはどういうことだ.....?おれの番号がない......

はりだされた合格通知に俺の番号はなかった......

確実に俺の合格基準の点数はとれていたはずだ.....これはなにかがおかしいと思った俺は、大学の窓口相談所に駆け込んだ。

「お願いです。今一度、名前を確認してください。」

「なんだね、君困るよそういうことをしてもらっては、もう決まったことなんだ、帰りなさい。」

「いや、しかし、お願いします。」

僕は赤子のように何度も頼み込んだ、そんな中僕の一部始終を見ていたある男から、声をかけられた。

「先生、ここは僕に任せてもらえませんか?」

「おお、△先生では、お願いします。」

......では、君こちらの部屋へどうぞ、と僕は言われた。

 

......ここは先生の部屋だろうか......なんともまあ、先生の部屋とはかけ離れたような部屋だった、周りはおもちゃで囲まれていて、周りは、資料ではなく漫画やゲームがたくさん置かれている部屋だった。

 

「ちょーっと、これじゃ話ができないね」

といい、周りにある漫画やゲームをブルドーザのようにどけていった。

「こんにちは、僕は△。ええと、確か君はここの試験に落ちてしまった高校生だよね?」

といわれた。

「ええ、そうです。僕にとっては不満だらけなのです。ですから、もう一度試験の見直しをしてほしいのです。」

「ふふ、まあ、そんなことよりクッキーなんていかかが?おいしいよ」

「そんなこと言ってる場合ではないんです。お願いします。」

僕は神妙な面持ちで教授に訴えかけた。すると....

「.......君はさ.....前世ってものを信じるかい?」

僕はその時に少し心臓がキュッとする感覚を覚えた。

「少し奇妙な話になるんだが、僕は信じているんだけどさ、前世ってやつ。

まあ、僕自身が前世の記憶があって神様に[記憶を引き継ぎますか?]なんて言われたんだけどさ。当然僕はYESと答えたよ....うん、今でも覚えてる。

まあ、そんな感じで今も僕は科学者として生きてはいるんだけどさ。最近ね妙に学生のレベルがすごく高くってね。大学でも合格の基準を上げざるをえないわけなんだよ.....

それで、君を見てるとまあ、そう思うんだよね。

まま、クッキーでも食べて。」

......そこから後は話は早かった.....まあ、平たく言えば、みんな記憶を引き継ぎ前世の失敗をしないようにみんな必死に勉強していると.....しかもそれが年々上がっているらしい。しかも来世があると知ってからは自殺も救いの一種だという事でどんどん自殺し、やり直し、勉強するというサイクルができていると言っていた。

そして教授が言うには自殺してまた17年の猶予でまた勉強し始めるか、違う道を選ぶかといわれた。

 

.........私は頭を抱えた......教授はこうはいっていたが、要はどんどん人間の知能レベルが上がっているという事だ.....

......これはまいった.......

 

 

 

俺は死んだ.....

まあ、変哲もないいつもの白い道だ.....また、聞かれるのだろう、さあ、おれの番だ。

 

記憶を引き継ぎますか?

「引き継ぎません。」