感謝
僕は至って普通のサラリーマンだ。
職業はシステムエンジニアで毎日毎日、同じようなコードを組んでいる。
正直いってかなり辛い。プログラミング言語を覚え確実に成長しているはずなのだが、毎日同じようなコードばかり見ていると自分ははたして必要な存在なのかわからなくなっていく。
うちの会社は客先常駐がほとんどなので、他社でコードを組むのだが、実際一緒にいる感じはしないのだ。
....まあ、ようは派遣できているようなもの。何か仲間間で何かが芽生えることなんてないし、ただ、ただ指示されたことをパソコンに打つような作業。
何かが抜け落ちまた何かが抜け落ちそしてタバコとビールで補完する。そんな生活をここのところ毎日送っているのだ。
....もうここのところ嫌なことばかり思い出してしまう。
.....もう嫌だ.....
....いかんいかん、ブルーになってはとりあえずもう少しで昼休みだ。ここで一服をとってまた、気持ちを切り替えて頑張らなくては。
昼休み休憩に入ったので、僕はいつもの所で牛丼を食うことにした。
そこで僕はいつもいつも牛丼屋のすぐ近くのところで食べようと入り口に入ろうとしたとき物乞いのホームレスをみた。
手にはカップがありお金をじゃらじゃらさせているおじさん。
何か諦めたような顔をしており、覇気はない。
僕はその時なぜかはわからないが、同じような心境になってしまったのだ。
自分でもよくわからない。生き方だって考え方だって全然違うはずなのに、僕は初めてその時に一枚のお金をその人に渡したのだ。
....褒められたかったわけじゃない。かわいそうだなと偽善者にでもなったのか、とその時思った。
それでも、老人は僕の手をいっぱいに握ってくれて、ありがとう。ああ、ありがとうと言ってくれた。
僕は恥ずかしかったのだろう。頭を後ろに回して、いえいえ、といい牛丼屋に入って行った。
....僕にとってなにかあったわけではないし、当たり前のことをしただけなのに何か心が晴れていくような気がした。
よくはわからないがな。
....そしてまた次の日僕はいつものようにコードを組んでいた。
組んで組みまた組んで組む、頭のおかしくなりそうな作業だ。
....やった終わったので、僕の代わりの上司に報告した。
「いつもありがとう。君は本当に早いね。違う会社だけど、これからもよろしくね。」
と何気ないいつもの会話を聞いた。
.....まただ。また感謝の言葉をいわれたのだ。
僕はなにか失われたものをまた取り戻すかのような感情に囚われた。
そして僕は仕事が早めに終わったので、帰ることにした。
その時何故かはわからないが、牛丼屋のホームレスのおじさんをいるかどうか確認した。
するといたのだが、向こうも僕を見ていて手を振り声をかけてくれた。
「あの時はありがとう。おかげさまで元気が出たよ」
「いえいえ、お気になさらず。」
「いや、本当にうれしかったんだよ。何かお返しさせてくれ、私にできることだったら、なんでも。」
「いや、ほんとに大丈夫ですよ。」
「.......それでも、君に改めて礼を言わせてくれ。ありがとう。」
僕は心があったかくなるのを感じて、そのまま、おじさんと別れた。
そして僕はいつものように帰っていった。
そして僕はいつものように派遣先の会社でコードを組んでいた。
いつもより早く仕事がおわったので、
僕はソースコードに引き継ぎのコメントをいつものようにした。
...そして「いつもありがとう」と入力。
なぜ、こんなことをしたのかはわからない。多分自分のためだと思うが、また、僕はあの時やった自分を思い出したいのだ。